まず最初にクイズを出しましょう。
「○○は、強制労働や商業的な性的搾取のために売買される男女や子どもの目的国および通過国のひとつとなっている。東アジア、東南アジア、東欧、ロシア、および中南米の女性や子どもが、商業的な性的搾取のために○○に売買されてきており、中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、その他のアジア諸国からの移住労働者は男女共に、時として、強制労働の被害者になることがある」
これは、アメリカ国務省人身売買対策監視室が2009年6月16日に発表した「2009年人身売買報告書」の一節だが、この「○○」というのはどこの国のことでしょう。
読者には、もうおわかりのことと思うが、答えは「日本」。「人身売買」というと「奴隷」という言葉を想起させて、きわめて前近代的でおどろおどろしい(不気味で恐ろしい)響きのある言葉だが、日本は実はアメリカや国連などの人権擁護部局からたびたび「人身売買への対策がきわめて不十分」と指摘されるなど、「人身売買の要監視国」の一つとされている。
「人身売買」は、日本の官庁用語では「人身取引」とも言われるが、「搾取の目的で、暴力、誘拐、詐欺、権力の乱用、脆弱な立場に乗ずるなどの手段を用いて、人を獲得、輸送、引渡し、蔵匿、収受すること」(国際的組織犯罪防止国連条約人身取引議定書の要約)と定義されている。要するに、人を暴力など強制力を使ったりだましたりして自由を奪い、搾取のために売買、取引すること。被害者の同意の有無を問わず、拘束されている状態であれば、人身売買に当たるとされている。
こうした人身売買は、1980年代になって急激に国際問題としてクローズアップされるようになった。国際的な交流・交通の活発化によって、性的搾取、強制労働、臓器摘出など、さまざまな目的の人身売買が国をまたいで行われるようになったからだ。人身売買は重大な人権侵害であり、国の根幹をゆるがしかねない問題。こうした犯罪による収益が国際的な犯罪組織の大きな資金源になっていることから、国際機関や各国政府、NGOなどによる防止、被害者救済の取り組みが行われている。 |