一時期さかんに報道されていた「外国人看護師・介護士」。どんな制度かというと、インドネシア・フィリピンから看護師・介護士の候補生を募って日本に来てもらい、病院で3年間実地訓練を積みながら研修を受けます。しかし、3年間のうちに日本の看護師・介護士の国家試験に合格しない場合は帰国しなければなりません。試験は、日本人も受験するもので、もちろん日本語で行われます。
実際にインドネシアから候補生たちがやってきたのは2008年(09年からはフィリピン人も来日)。しかし、09年の看護師試験では合格者はゼロ。今年の試験では外国人受験者254人中、わずか3人が合格しました(日本人は9割が合格)。日本語が壁、と言われる試験で合格した人はものすごく努力したんだろうな、と思う一方で、試験は「狭き門」というよりは「帰国させるための口実」なのではないかという気もします。
今年に入って、候補生たちを受け入れる日本側の病院の数が198から61へと3分の1以下に減ってしまい、また送り出し国でも候補生たちが日本を敬遠して予定通りの人数が集まらない、という低調ぶり。受け入れる病院は宿舎や手当を確保しなければならない上に、3年のうちに合格しなかったら帰国となるために、どこまで予算をつけて教育するべきか、見通しが不透明、ということもあります。政府にも定まった教育方針はありません。
そもそもこの制度はどこから始まったかというと、小泉政権時代に経済自由化の流れで日本がインドネシア、フィリピンと結んだEPA(経済連携協定)の中で取り決められたことでした。このEPA、私は看護師の問題としかとらえていなかったのですが、調べてみると、車の部品や鉱物資源、農産物などの関税を取り払って貿易をしやすくする、などの取り決めの中に「自然人の移動」という項目があり、モノの貿易の中に「ヒト」の移動も含まれているのでした。
つまり、外国人看護師・介護士の受け入れは、医療現場での人手不足やニーズとは別の場所で決められたことだったようで、政府の中でも外務省・経産省などは受け入れ賛成、厚労省は反対と迷走状態が続いており、それが方針のブレや受け入れの低調にもつながっているのでしょう。
前回問題だらけの「研修生制度」について書きましたが、この看護師・介護士受け入れは、新たな医療版・研修生制度になってしまうのではないかと心配です。日本の医療現場で看護師・介護士が本当に不足しているとしたら、それはきつい労働にもかかわらず待遇が悪いからでしょうし、それをただすことなく外国人で補う、という発想は「時給300円」の研修生制度と変わりありません。それが医療現場でどのような影響をもたらすのか、不安になります。 |